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遺産分割の争いを避けるための対策

1.相続人による遺産分割の話し合いはなぜ揉めやすい?

高齢の親御さんがお子さん達から遺言の作成を懇願されても、親御さんは「ウチに限って揉めるはずがない」作成に応じないというケースもあります。

 

今は仲の良い兄弟であっても、当の本人はいないのだから、揉めないという保証はありません。

 

お子さん達には、配偶者という応援団が控えています。また、同じ相続人でも親の世話をした人、しなかった人との意識の差はとても大きいものです。お金持ちだから、権利を主張しないというのは幻想です。

 

それに加え、相続人の事情で遺産分割の話し合いに手間・暇がかかるケースもあります。外国にいる相続人の場合には、在留証明とサイン証明が必要でそう簡単にはとれません。

 

認知症などの病気で話し合いに疑問がある場合には、家庭裁判所に成年後見人の選任の申し立てをする必要があります。

 

また、相続の話し合いのタイミングを間違えると、泥沼化することがあります。早すぎてはいけません。特にお通夜の席で話をすることは厳禁で、せめて四十九日まで待つことです。反対に遅すぎてもいけません。

 

相続税の申告納付期限ぎりぎりに話し合いをすると余裕がなくなり、例えば相続税納税のために不動産を売却するような場合、足元を見られて大幅に譲歩しなければなりません。

2.公正証書遺言のメリットと作成で注意するポイント

このように遺産分割の話し合いは大変ですから遺言をお勧めします。

きちんとした遺言を作成すれば、遺産分割の話し合いが不要ですし、お世話になった相続人以外の方に相続財産の一部を渡すこともできます。

遺言の仕方としては公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、以下のような理由から公正証書遺言がお勧めです。

  1. 公証人が作るので形式的に無効となる可能性が低い。
  2. 内容についても公証人のチェックが入り、偽造と疑われることも少ない。
  3. 遺言能力が推定される。
  4. 紛失しても公証人役場に長期間原本が保存され、他の公証人役場でも調査が可能。

もっとも最近は公正証書遺言でも、認知症などを理由に遺言能力がないとして向こうを争ったり、替え玉であるとして偽造を主張するケースがあります。

 

公正証書遺言を作成する際に医師の診断書や当日のビデオなどとって証拠作りをすることも有効です。遺言に各内容の注意点は以下のとおりです。

  1. 各財産を誰に渡すかを具体的に明記し、割合では書かない。(共有にすると行動管理でもめて共有物分割訴訟になる場合がある)
  2. プラス財産だけでなく、借金等のマイナス財産も書く。
  3. 祭祀(葬儀)の主催者を指定する。
  4. 遺言執行者を指定する。

ただし、全財産を一人に渡すというような一方的な遺言は遺留分による減殺請求を招き、かえって紛争を長期化させることになりかねません。

認知症などのリスクをカバーする信託を活用した相続対策

相続対策は遺言だけではありません。最近注目を集めているのが信託です。

 

信託とは財産(信託財産)を所有するA(委託者)がB(受託者)に財産の所有権を一定期間移転することにより財産の管理・処分を任せ、C(受益者)のために信託財産から生まれる家賃などの収益の帰属や信託財産の引渡しを確保することです。

 

一般的には、下図のようにAがBと信託契約を結び、Aが生前中の第1次受益者をA自身とし、Aが亡くなった場合にはAの相続人の一人のCを第2次受益者とします。

 

Aの死亡により信託財産がCに事実上移転するので、遺言と似ているわけです。

 

この制度の良い点は、Aが認知症になったとしても、その前に財産の所有権がBに移転しているので、成年後見人の選任申し立てをするまでもなく、その収益が生前中はAに確保されることです。

 

そしてAの死後は収益がCに帰属し、信託期間が終了すると、信託財産そのものがCに引き渡されることになります。


今日の言葉 ~心に明かりを灯す言葉~

『だからよかった』(メール「人の心に灯をともす」より)
曽野綾子氏の心に響く言葉より・・・

私の人格形成に一番の影響を与えたのは戦争と両親の不仲だったと思います。
家庭内がとてもいびつでしたから、それがとてもよかったと思います。
小説家にとっては貧乏も戦争も歪(ゆが)んだ家庭環境も、何もかも肥料でした。
父は別に酒乱でもない、外に女をつくる人でもなく、借金を踏み倒すような人でもない。
けれども母とは絶対に気が合わなくて、人をなじるところがありました。
おかげで私は家庭内暴力というものを小さい頃から知っています。

いま政府が虐待を受けている子供が訴えやすいようになんてやってますが、
いくら制度ができても子供はほとんど訴えませんよ。
やはり親をかばうんです。
そういうこともあの環境で学びました。

父は慶應義塾を出て、見かけはとてもいい人なんです。
だから外見と内面は違うということも子供の頃から叩き込まれました。
おかげで私は人生や人間に対して甘い考えはありません。
いい教育だったと思います。
父にはうんと感謝しています。

そしていま、年を重ねて人生が楽しいと感じるのは、人生の出来事は
すべて関係があるということが見えてきたからじゃないかと思います。
この世に独立したものはない。
いままで全く関係がないと思っていたことが、ここでこう繋(つな)
がるのかと見えるようになってきた。

だからいま前にも増して世の中のことが面白くなってきました。
いまの方はマイナスはマイナス、それを肥やしにしている人が少ないよう
な気がします。

「八十路、我らなお人生を楽しまん」(曽野綾子・渡部昇一対談)

『月刊 致知 20135月号』致知出版社